相続Q&A

「相続税を節税する目的での養子縁組」

質問内容

養子縁組によって相続税は節税できるのでしょうか。また,専ら相続税を節税する目的での養子縁組は法的に有効なのでしょうか。

回答

1 養子縁組による相続税の節税
 養子縁組をすると,相続税の基礎控除額が増加するなどの節税効果が期待できる場合があります。たとえば,相続人が妻1人の場合,相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円=3600万円」ですが,養子縁組により法定相続人が1人増えた場合には,「3000万円+(600万円×2)=4200万円」となります。
注意すべき点としては,基礎控除額等の計算で法定相続人の数に含める養子の数について,被相続人に実の子供がいる場合には一人,実の子供がいない場合には二人までと,基礎控除の算定対象となるこの数が制限されていることが挙げられます。もっとも,上記養子の数については,被相続人の配偶者の実の子供で,被相続人の養子となった人等,養子であっても実の子供として取り扱われる場合があり,制限の例外も認められています。
2 専ら相続税を節税する目的での養子縁組の有効性
 養子縁組は,「当事者間に縁組をする意思」(以下「縁組意思」といいます)がない場合には,無効となります(民法802条1号)。ここで縁組意思とは,養親子関係を形成する意思などと説明されますが,実際には,養子縁組は多様な目的で行われることが多く,親子のような関係にない養親子であっても,直ちに養子縁組が無効とされることはないのが実情です。専ら相続税を節税する目的での養子縁組は,この縁組意思がなく,無効とされないかが問題とされていました。
 近時,最高裁は,相続税の節税のために養子縁組がなされた事案で,縁組意思が認められるかどうかについて初めて判断を行いました(最高裁平成29年1月31日第三小法廷判決)。
 当該最高裁判決の事案の概要は,以下のとおりです。
被相続人には,長男,長女,次女という実子3人のほか,被相続人が養子とした長男の子供1人が相続人として存在していました。被相続人と長男の子供の間の養子縁組は,専ら相続税の節税を目的とするものでした。被相続人の死後,長女及び次女は,養子である長男の子供に対して,当該養子縁組は縁組をする意思を欠き無効であることの確認を求めて訴えを提起しました。
 最高裁判決は,上記事案において,相続税節税のために養子縁組することは,「1 養子縁組による相続税の節税」で述べたような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするもので,そのような動機と縁組をする意思は併存し得るという考え方を示し,専ら相続税節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について縁組意思がないとはいえない,という判断を示しました。
 今回の最高裁判決を踏まえると,具体的にいかなる事案で養子縁組が無効とされるかは未だ明らかではないものの,少なくとも,専ら相続税を節税する目的で養子縁組を行った場合でも,必ずしも養子縁組は無効とされないと考えられます。

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