相続人が自宅を失うことなく、且つ、不動産の時価を上回る負債の相続を免れたケース
相談前の状況
ご相談者(妻)は、子供達ともに亡夫名義の自宅に居住しており、亡夫の死亡後も引き続き居住することを希望していた。
しかしながら、亡夫は、生前、個人事業を行っており、自宅を担保に金融機関から事業資金を借り入れており、死亡時は未だ多額の借入が残っていた。
ご相談者は、生命保険でも全額返済は不可能であり、少しずつでも負債の返済を継続しながら自宅での居住を続けるか、相続放棄をして転居するかを判断しかねている状況であった。
相談後の状況
ご相談者以外の法定相続人は全て相続放棄をしたうえで、限定承認を申し立てたうえで、自宅を含む財産の限度で相続することとした。また、限定承認手続において裁判所の関与のもとで自宅の鑑定評価を行い、その評価額を抵当権者に支払うことで抵当権を抹消することができた。これによって、ご相談者は自宅に住み続けることができ、自宅の時価以上の負債の相続も免れた。
弁護士のコメント
本件のような事案では、相続放棄のうえで、特別代理人を選任するなどして任意売却によって取得する方法や担保権実行による競売手続において入札する方法も考えられる。もっとも、任意売却の場合も競売の場合も売却手続を主導することはできず第三者が取得する懸念があるところ、限定承認によってこれらの懸念点を回避することができたといえる。
もっとも、限定承認に関しては、法律上は手続の詳細は定められておらず、換価にあたって不動産譲渡税が課されるなども問題もあるため、限定承認を選択する場合は慎重な判断が必要である。