遺産分割協議を行うことが事実上困難だったケース
事案の概要
80歳の女性が死亡し、相続が開始しました。女性の夫及び子(男性)は既に死亡していたため、相続人は、男性の子(死亡した女性の孫)3名となりました。この男性は、生前、法律上の妻以外の女性2名との間にそれぞれ子を1人ずつもうけて認知しており(非嫡出子)、3名の相続人はそれぞれ異なる母親を持ち、お互いに全く音信不通という状態でした。一方で、相続財産は、複数の不動産、預金、有価証券等多岐にわたり、権利関係を明確にすべく遺産分割協議を成立させておくべき必要性が大きい状況でした。
解決結果
そこで、弁護士が、相続人のうち、男性と法律上の妻との間のお子様から委任を受け、法定相続分に従って、依頼者様の取り分が相続財産全体の評価額の2分の1、非嫡出子の方2名の取り分がそれぞれ4分の1となるよう分割する内容の遺産分割協議案を他の2名の相続人に提示、交渉を行い、法定相続分に従った内容で遺産分割協議が成立しました。
弁護士のコメント
本件では、相続人間で遺産分割の方法について特段の争いはなく、早期に遺産分割協議が成立しましたが、相続人間で全く面識がなく、遠方に居住しているということもあり、ご本人において遺産分割協議を行うことは事実上困難な事案でした。弁護士が交渉窓口となり、法律を踏まえた解決案を示すことで早期解決が可能になった事案といえます。
なお、現行の民法は、法律上の妻以外の女性との間に生まれ、父親から認知された子(非嫡出子)の法定相続分は、法律上の妻との間の子(嫡出子)の2分の1としていますが、平成25年9月4日、最高裁は、同規定は「法の下の平等」を保障した憲法に違反するとの判断を示しましたので、今後発生する相続に関しては、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等に扱う必要があろうかと思われます。但し、最高裁は、混乱を避けるため、この違憲判断は既に確定した裁判や調停に対しては影響を及ぼさないとしています。