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2015/02/27 
平成26年9月5日高松高裁決定(一般財団法人を特別縁故者とした事例)
【概要】
 労災事故により全身麻痺となって長年介護付施設に入居し,入居中に死亡した被相続人の相続につき,同施設を運営する一般財団法人が被相続人の療養看護に努めた者として特別縁故者に当たると判断された。

【事実経過】
 被相続人Aは,平成22年8月26日に死亡し,Aの相続人の存否が不明だったため,相続財産管理人が選任されたものの,相続人としての権利を主張する者は現れなかった。
 Aは労働中の事故で首から下の全身に麻痺が残り,生前,X(労働災害で介護が必要となった者のために相談や援助を行っている一般財団法人)の運営する介護付施設に入居していたところ,XがAの特別縁故者であるとして,Aの相続財産の全部をXに分与するよう,家庭裁判所に申立を行った。
 
【争点】
 一般財団法人Xが被相続人Aの「療養看護に努めた者」(民法958条の3第1項)として,特別縁故者に該当するか。

【裁判所の判断要旨】
 Aは,首から下がほぼ麻痺状態で,約6年間,本件施設(Xの運営する介護付施設)に入居しており,その間,親族との交流があったとは認められず,本件施設において,日常生活についてほぼ全面的な介護や解除などを継続的に受けて生活してきた。
 また,本件施設では,Aを適宜買い物やレクリエーションに連れ出すなどしていたほか,Aの実母が死亡した際には,その求めに応じて,葬儀や納骨,相続に関する手続などに便宜を図ったことが認められる。さらに,本件施設では,介護に関するA独自のサービスの要求や無理な注文にも職員が辛抱強く対応してきており,これによりAもほぼ満足できる生活状況であったことが認められる。
 これらの事情によれば,XはAの療養看護に努めた者として,特別縁故者に当たると認めるのが相当である。
 なお,Aは本件施設の入居中に利用料を支払ったと認められるものの,厚生労働者が利用者の収入等に応じて定めたものであって,実際の介護サービス等の程度や内容等を反映して定められた報酬であるとは認められない。また,仮に施設利用料と介護サービス間に対価関係が認められるとしても,それだけで前記の特別縁故者に当たらないと判断するのは相当ではない。

【コメント】
 本件は一般財団法人が「特別縁故者」であるとの判断がされていますが,この点については,同様に市町村や各種法人を特別縁故者であると判断した審判例が一定数存在します(市を「特別縁故者」とした審判例として浦和家裁秩父支部平成2年6月15日,法人格を有しない県立の老人ホームを「特別縁故者」とした審判例として那覇家裁石垣支部平成2年5月30日参照)。
 むしろ本件では,Aが本件施設の入居料を支払っていたことが問題となりました。つまり,特別縁故者制度は,もし被相続人が遺言の作成等を行っていたならば,被相続人と特別親しかった者や被相続人に対して貢献をしていた者に対して財産を与えるはずという推認が前提となっているので,報酬に応じて療養看護を行っていただけでは(対価関係がある場合には),特別縁故者に該当しないのではないかということが問題となりました。
 これについては,看護師や介護士が正当な報酬の下,被相続人の療養看護を努めても,特別縁故者にはあたらないという考え方が一般的であり,本件の原審(松山家裁西条支部平成26年5月2日)も入居費用と施設のサービスの対価関係を指摘して,Xは特別縁故者に該当しないと判断しました。
 しかし,本決定では,本件施設の入居料は厚生労働省が入居者の年収に着目して一律に定めたものであり,実際の介護サービスの内容を反映させた報酬ではないことを指摘して,本件ではXはそもそも正当な報酬を受領していないと認定しました。また,本決定は仮に対価関係が認められるとしても,それだけで特別縁故者に該当しないと判断するのは相当ではないとして,対価関係の有無が決定的な要素ではないとの考え方も示されており,実務上参考になると思われます。
 なお,特別縁故者に該当するという判断がなされても,「相当と認めるとき」でなければ被相続人の財産の分与を受けることができませんが(民法958条の3第1項),本件では,財産の内容がXの予定している使途(社団の内規に従い福祉増進事業に使われる)に反しないことや,相続財産管理人が特に反対意見を述べていないこと等を考慮して,相続財産の全部をXに分与する旨の決定がされています。

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