「[3]遺言制度に関する改正」
質問内容
Q12:遺言執行者の権限は,なぜ明確化されたのでしょうか?
回答
改正前の民法では,遺言執行者の権利義務について,「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」(改正前の民法1012条)と抽象的に定めるだけでした。特に,改正前の民法1015条は「遺言執行者は,相続人の代理人とみなす」と定めることから,相続人がこれを文字通り,遺言執行者は相続人の利益のために職務を行うべきと解釈して,トラブルに発展することがありました(例えば,全財産を共同相続人の1名に相続させる旨の遺言に対して,他の相続人から遺留分減殺請求が行われた場合,遺言者の意思と遺留分減殺請求を行使した相続人の利益は明らかに対立することになりますが,法律上,遺言執行者は誰の利益を保護するために遺言を執行するのか,その法的地位が明確になっていませんでした)。
しかし,高齢化が進み遺言件数も増加する中,遺言の執行をスムーズにして相続紛争を抑制するために,遺言執行者の役割はますます重要になってきます。そこで,遺言執行を円滑に進めるため,遺言執行者の権限について,具体的に明文化されることになりました。