相続Q&A

「[4]遺留分制度に関する改正」

質問内容

Q2:遺留分権利者の権利行使によって生じる権利の金銭債権化について教えてください。

回答

1 制度の概要
 遺留分権利者の権利行使によって生じる権利の金銭債権化に対応する改正民法の条文は次のとおりです。

(遺留分侵害額の請求)
第1046条 遺留分権利者及びその承継人は,受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

(受遺者又は受贈者の負担額)
第1047条 受遺者又は受贈者は,次の各号の定めるところに従い,遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては,当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として,遺留分侵害額を負担する。
(第2~4項略)
5 裁判所は,受遺者又は受贈者の請求により,第1項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

 遺留分権利者は,受遺者又は受贈者に対し,遺留分を侵害する遺贈や贈与について,侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができるようになりました(改正民法第1046条第1項)。

2 留意点
 留意点としては,受遺者や受贈者が,遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを準備できない場合については,裁判所が,受遺者又は受贈者の請求により,遺留分侵害額に相当する金銭の全部又は一部の支払いにつき,期限を猶予することができるという規定も定められていることが挙げられます(改正民法第1047条第5項)。 
 裁判所が上記の期限を定めるにあたっては,受遺者や受贈者の資力や,問題の財産を売却するなどして資金を調達するために要する通常の期間等が考慮されることが考えられます。

3 改正の理由
 改正前民法の下では,遺留分に関しては,権利者が権利行使をした場合,遺留分を侵害する遺贈や贈与は,遺留分に該当する部分について無効とされ,該当部分の権利は当然に遺留分権利者に帰属すると解釈されていました。
 かかる解釈の下では,遺留分権利者が,権利行使の結果受遺者又は受贈者と財産を共有するに至ることが多く,その後の財産の処分に長期間を要するなどの問題が生じていました。今般の改正は,遺留分権利者の受遺者又は受贈者に対する権利行使を金銭支払請求に限定することによって,上記のような問題の発生を回避する目的で行われたものです。
 なお,改正前民法は,遺留分権利者による権利行使につき「遺留分減殺請求」という名称が使用していましたが,改正民法では,「遺留分侵害額請求」と名称が改められました。 

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