相続Q&A

「[5]相続による権利及び債務の承継に関する改正」

質問内容

Q3:相続による債務の承継に関する改正について教えてください。

回答

1 制度の概要
 相続による債務の承継について定めた改正民法第902条の2の条文は次のとおりです。

(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第902条の2  被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は,前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても,各共同相続人に対し,第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし,その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは,この限りでない。

 遺言により相続分の指定がなされると,各共同相続人は(権利だけでなく)債務をその指定された相続分に応じて相続することとなりますが,その債務にかかる債権者(相続債権者)は,相続分の指定にかかわらず,各共同相続人に対し,法定相続分に応じて権利行使をすることができます。

2 留意点
(1)法定相続分より小さな割合の相続分が指定された共同相続人の一人(例:法定相続分が1/2,指定相続分が1/5)が,相続債権者から法定相続分に応じた権利行使を受けて実際に支払った場合には,他の各共同相続人に対して,指定相続分を超えた部分(上記例だと1/2-1/5=3/10)について求償する(償還を求める)こととなります。
(2)相続債権者としては,必ずしも法定相続分に拘束されるわけではありません。つまり,相続債権者が各共同相続人の指定相続分を把握している場合などにおいて,相続債権者の側から,その指定相続分に応じた債務の承継を承認し,各共同相続人に対して,その指定相続分に応じて権利行使をすることは可能です。
(3)本規定は,2019年(令和元年)7月1日以降に開始された相続について適用されます(もっとも,後述のとおり,実務上の影響はないといえます)。

3 改正の理由
 改正前民法のもとでも,相続債権者の保護の観点から,相続債権者は相続分の指定にかかわらず法定相続分に応じて権利行使をすることができるという実務上(判例上)のルールが確立しており,本規定ではその実務上のルールが明文化されたこととなります。
 そのため,今回の改正によって実務に大きな影響があるわけではありません。

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